TOSHIBA 2SC1815

TOSHIBA 2SC1815 は東芝の汎用小信号シリコントランジスタ。エピタキシャル構造(PCT方式)、NPN型。TOSHIBA 2SA1015 とコンプリペア。

汎用品種の定番品。元は、TOSHIBA 2SC3722SC373(、2SC732、2SC1000)の改良型で、当初は 2SC372 などと同じツバつき形状(東芝2-5B)だったが、その後、TO-92型に変更される。1976年頃、登場。一般に出回るのは、1979年ころから。ローノイズ選別品の (L)、RoHS指令対策品の (F) などもある。hFE を表す Y(Yellow) や GR(Green) は元々、型式ではなく本体にインクが塗布されていた。データシートでは O(Orange、70-140)、Y(120-240)、GR(200-400)、BL(Blue、350-700) が記載されているが、-O はほぼ出回ることがなく、2SC371 や 2SC372 の代替など、特殊な用途で必要とする顧客向けに特注で生産、納品されていた。同じく、-BL もあまり出回っておらず、アマチュア工作で手に入るのはもっぱら -Y と -GR ばかり。-Y と -GR は hFE のランクが違うだけだが、オーディオ回路に用いると、-Y のほうが音質が良い回路になることが多く、(多くの回路では hFE が高いほうが使いやすいため、一般的には不人気な) -Y が入手難になりやすいという逆転現象もあった。

データシートでは低周波電圧増幅用、励振段増幅用の品種とし、fT も 80MHz と同クラスでは控えめ、低雑音品種でもないという目立った仕様ではないものの、実際には fT は測定条件が厳しい(Ic = 1.0mA。他社は 10mA時のものが多い)もので、実際には軽い RF領域でも使用でき(Ic = 40mA で fT : 500MHz以上)、PCT方式やイオン注入などの当時の最先端プロセスで作られ、低雑音品種に匹敵する雑音性能で、データシートからは読み取りにくいものの定格いっぱいまで電圧をかけてしまうなど、アマチュアが電子工作で使っても壊れにくいこと、品質が安定していて回路によっては選別すら必要ない(1980年頃のトランジスタは製造のバラつきが多かったので、使用時に選別を必要とした)、他社品だと 3~4ランクに分かれる hFE区別が、実質2段階(-Y、-GR)しかないなど、使いやすさが評価されて、登場から 35年も製造され続けた息の長い品種となった。日本では定番品種だったものの、日本以外だとライバルの NEC 2SC945 に勝てず、世界的な知名度は高くない。

2010年ころに、他の TO-92 の品種と同じく、新規設計非推奨品(NRND)に指定された。2011年秋のタイ洪水がキッカケで、東芝セミコンダクタ・タイ社のパトゥムターニー県バーンカディー工業団地にあったディスクリート半導体工場のラインが復旧不可能となり(2013年にプラーチーンブリー県に拡大移転)、そのまま 2012年に廃品種となった。廃品時点での価格は 600円/200個(秋月)~700円/100個(共立)程度。

廃品種になっても、汎用品として普及していたので流通在庫は相当残っており、少しずつ値上がりしたものの、2020年くらいまでは入手できたが、その後は価格差など(2023年に 32~64円@若松通商)を考えるとセカンドソース品が選択肢になる。

Jiangsu Changjing(台湾)の 2SC1815、Onsemi(米)の KSC1815、UTC(台湾) の 2SC1815L などが入手しやすいが、UTC製などはオリジナルより性能がかなり低いので注意が必要。

型式は違うが、KEC(韓国) の 2SC3198 / KTC3198 は東芝のライセンス生産品で中身は同じ。KEC こと韓国電子は、元々韓国東芝という東芝の現地子会社で、日本で生産しなくなった品種の生産ラインを移設して製造していた。ただし、2000年代など一時期は日本でも激安互換トランジスタ(単価1円以下だった)として出回っていたものの、こちらは定番品ではないのでむしろ入手難。KTC3198 は 2023年時点で現行品(6.9円@chip1stop、2000個)。東芝製の家電では 1990年代から使われていたので、実績は十分と考えられる。

TOSHIBA 2SC2458 はサイズが小さく(TO-92S)、Pc : 200mW と定格が異なるほかは同じモノで、2SC1815 と違って型式指定で探している人が少ないため、いまのところ入手できる。KEC版が 2SC3199 / KTC3199。サイズが小さいため、大量生産のメーカ品では重宝され、むしろメーカ製品の基盤では 2SC1815 より見かける頻度が高い。(これは他の TO-92、TO-92S がある他品種でも同じ傾向)





TOSHIBA 2SC1815-GR。200個入り

汎用品種だったので、現役当時は 200個入り、500個入りなどで売られていた。写真の袋は 2000年代前半に購入したもの。1991年1月か、2001年1月製造。





TOSHIBA 2SC1815-GR。マーキングは C1815 / GR1A。TO-92サイズ

TO-92 形状。マーキングは印刷。hFE はメジャーだった、GRランク(200-400)。





TOSHIBA 2SC1815-GR。Ic-hFE特性

同一ロット品からサンプルを 5個、適当に抽出して hFE を測定したもの。Ic = 1.0mA付近の数値で、288.2、289.4、290.8、290.9、298.4 とほぼバラつきなし。測定条件は Vce = 7.0V。

以下の特性は、hFE : 288.2 の個体を計測。





TOSHIBA 2SC1815-GR。Vce-Ic特性

Vce-Ic特性。低電流、能動領域では Vce依存が少なく、横一直線に伸びている。Ic間も一定で、Ib依存が少ない。測定条件は Vcc = 7.0V。

アーリー電圧(VA) は約138V。





TOSHIBA 2SC1815-GR。Vce-Ic特性(飽和領域)

飽和領域のVce-Ic特性。こちらも申し分のないキレイな特性。





TOSHIBA 2SC1815-GR。Vbe-Ic特性

サンプル5個(hFE測定と同じ個体)の Vbe-Ic特性。測定条件は Vce = 6.0V。

小信号トランジスタ

(続く)