SANYO 2SA608 は 1960年代に三洋が開発した、同社初の汎用小信号シリコントランジスタ。SANYO 2SC536 とコンプリペア。
登場後、製造プロセスの改善などでスペックアップしていくが、この型式は汎用品種として廃盤にならずに使われ続けたので、同じ型式で複数のスペックのものが存在する。形状が変わっても同じ型式のままなので、非常に種類が多い。-NP が三洋NP型(2003A、TO-92) で Pc : 400mW、-SPA が三洋SPA型(2033、TO-92小型) で Pc : 200mW。-KNP は Vceo : 50V。
三洋半導体は親会社の三洋電機がパナソニックに合流する際に部門ごと放出となり、米国の On Semiconductor(オンセミ)が買収した。Onsemi買収後は、Onsemi の品種として製造、販売が続けられたが 2023年現在は生産終了品になっている。三洋半導体の前工程製造子会社だった三洋半導体製造株式会社(元新潟三洋電子)はオンセミ新潟となったあと、2022年にスピンアウトして JSファンダリとなった。本品種を含めて、オンセミ新潟で製造していた品種は廃品種となったが、JSファンダリの IP として継承されていれば、再生産される可能性がある。2023年からサンケン電子が JSファンダリ内でパワー半導体を製造する。
本品種を低ノイズ改良したのが 2SA929。高耐圧版である 2SA608K の後継機種は 2SA1317 だが、こちらも廃品種。FBETプロセスで製造したものが 2SA1391(低雑音版)、2SA1392。
Onsemi の廃品種については、Rochester Electronics(米国)という会社が保守用として在庫している。一部品種についてはメーカからダイで仕入れており、オーダーごとにパッケイジングして製造、販売している。いわゆるセカンドソース品とは違い、オリジナルのダイを使うので性能などの点で遜色はない。1品目1オーダー$250~ で少量でも受けている。2023年現在、2SA608F-NP-AA なら単価$0.039/個(@6,500)。
写真のものは、2023年に共立エレショップで購入したもの。汎用品種のため、長らく TO-92 のものが出回っているが、Onsemi時代に製造された TO-92 より小型の、SC-72(TO-92S) の形状のものもある。hFE は標準的な、Fランク(160-320)。
同一ロット品からサンプルを 5個、適当に抽出して hFE を測定したもの。Ic = 1.0mAの際の数値で、233、258、254、265、250 とほぼバラつきなし。測定条件は Vce = 6.0V。
以下の特性は、hFE : 233 の個体を計測。
Vce-Ic特性。データシートに記載されたものと同じく、能動領域では Vce依存が少なく、横一直線に伸びている。Ic間も一定で、Ib依存が少ない。ROHM 2SA733 に匹敵する特性。測定条件は Vcc = 7.0V。
アーリー電圧(VA) は約52V。これは PNP の品種としては非常に優秀な数値。
飽和領域のVce-Ic特性。こちらも低圧から申し分ない特性。
サンプル5個(hFE測定と同じ個体)の Vbe-Ic特性。測定条件は Vce = 6.0V。
(続く)