6BM8S アンプの製作

回路設計

前述した基本概念を元に,回路を設計します.回路図を以下に示します.

信号系は,単純な3極管部による初段兼ドライブ段と,5極管部の3結による出力段をカップリング・コンデンサで結合しています.6BM8は小型の球ですから,比較的低電圧で動作させた方が安全ですが,今作ではちょっと高めの250Vを掛けています.出力段は約45mAを流します.定数の計算はEp-Ip曲線を元に決めますが,RMGはE24系統しかありませんから,E24系統で近似値を選択します.なお,大した誤差が出るわけでもないので,E12系統から選択しています.

R1(1k)は不要な局部発振を防ぐための安全抵抗で,一般的には1k〜10kから選ばれますが,音質的には大差ないので,適当に1kを選びます.ワイヤリングに自信が無ければ,4.7k辺りを使います.R2(2.7k)はカソードによるバイアスを計算して定数を決めます.一般的にはACだけパスするパスコンをパラりますが,これは音質的に好ましくないため私は用いません.なお,NFBアンプではパスコンの有無より,回路全体の利得を上げる方が重要なので,入れる事にメリットがあります.どうせNFBを掛けてしまえば,パスコンの有無より大きな音質変化があるので,細かい事は気にしなくていいでしょう.それより,当然時定数ができるので,スタガー比も考慮します.とりあえず大きければ大きいほどいいでしょう.

出力段のグリッド抵抗R4(1M)は大き目の値ですが,6BM8は新設計でグリッド抵抗が流れる事も無いので,前段の負荷を軽くするためにこの値を用いています.6BM8の定格ではカソードバイアス時,最大2Mオームとなっているので問題ないでしょう.6BM8の概要を以下に示します.

電源部は,チョークコイルを用いないため,ドロップ抵抗と電解コンデンサによる2段πフィルタを生成しています.デカップリングを左右で分離するため,2段目フィルタは左右で独立しています.整流管には,6BM8と同じMT-9EZ81/6CA4を用いています.小さなサイズから,150mAの電流を取り出せる,高性能整流管です.ただ,使いやすい球ではありますが,製品などで用いられる事は少なく,潤沢とは言えません.ポピュラーなMT-9の整流管といえばEZ90/6X4でしょうか.ただし,EZ90/6X4では左右分の電流を取り出す事ができないため,サイズは大きくなりますが,高性能整流管のGZ34/5AR4を用いた方が良いでしょう.MT-9の複合管を動かすのに,GT管とはバランスが悪いですが.

ちなみに6BM8は供給が潤沢ではないとはいっても,入手困難品ではありませんので,価格を気にしなければ購入は可能です.私が購入したものは,英国HALTRON製で\1,000でした.(※現在はけっこう入手難になり、売りに出ても1本3,000円以上します)

6BM8Sアンプ回路図(PDF)
※現在は改良版の回路に変わっています。
6BM8データシート

このコンテンツは 2003年に別のサイトに掲載したものを加筆、修正して転載しています。