6BM8S アンプの製作

部品

今回は,コストをなるべく押さえる,という方針がある一方,安いだけの部品で妥協しない,という方針のため,部品は常用品を中心に揃えています.

まず,私にはこだわって譲れない部品が3つあります.入力ボリューム,抵抗,カップリングコンデンサです.

入力ボリュームでは,アルプスのミニ・デテントを選択します.このボリュームは,デテント風にクリック感を出しているだけの安価なカーボン抵抗なのですが,音が痩せないというボリュームにとっての難題をクリヤーしています.どちらかというと真空管派に支持者が多いように見受けられますが,これは抵抗値の事もあるのかもしれません.抵抗値によって音質も違うのですが,私の常用は100kです.しかしこのボリュームは注文生産品のため,いつでも入手できるものでもありません.私の手元にも多少在庫がありますが,店頭で見つけ次第買うようにしています.なお,注文品ゆえ,いろいろなバージョンがあります.デテントになってないもの,シャフトの長さや仕様がありますが,手元のものは何れもアルプスの標準仕様のものです.

抵抗は,理研電具のリケノームRMG抵抗(※)です.これはオーディオ用として開発された抵抗で,全く持って色付けの無いその作りには脱帽です.値段は高くないのですが,これが反対に高価格=高音質と勘違いしている多くの自作派には知られない理由かもしれません.作りは一般的なカーボン抵抗ですが,キャップは金メッキ,リード線はOFCで金メッキです.外見は美しい青で,そのきれいなスタイルだけでも使いたくなってしまう抵抗です.金メッキの無いRMAという抵抗もあったのですが,こちらは残念ながら生産中止となってしまいました.ちなみに,RMAは淡白で清楚な正統派の抵抗で,RMGはその音質のまま,音にやわらかさを加えたような系統です.E24系統が用意されているので,ほぼ希望値が得られるでしょう.

そしてカップリングコンデンサです.常用はデットストック品となりますが,SpragueVitaminQというオイルペーパコンデンサです.まさにカップリングする事に臆しなくなる,というほど信頼できるコンデンサです.しかしデットストックという事もあって多少高価なため,今回は代用品を用いることにします.代用といっても,VitaminQには敵わないでも音質的に好ましい系統のものです.第一候補は同じくSpragueOrangedropというコンデンサです.VitaminQの後継とも言える品で,系統としては近いながらもVitaminQにあるような魔力は持っていません.第二候補はメーカは異なりますがVitaminQをモチーフにしていると思われる,東一のビタミンQというオイルペーパコンデンサです.巷ではなかなか人気があるようですが,それも納得できる音を聴かせてくれます.価格はVitaminQの1/5程度ながら,その価格差を感じさせない実力が素晴らしいです.今回はこの東一のビタミンQを選択する事にします.

電源部ではデカップリングという大切な役割もありますので,コンデンサには吟味が必要です.とはいっても,真空管回路で耐えれるような高耐圧品はほとんど選択肢が無い状態ですから,吟味する間もなく選択するのが普通でしょう.常用品はドイツ製のF&Tというアルミ電解コンデンサで,低価格ながらそれほど安っぽい音は出しません.とはいっても,他の方に薦めるほど気に入ってるものでもなく,イギリス製のLCR(LCR Capacitors)の代用という感じで使っています.デカップリングに,SHIZUKIRU-Zを用いると,一気に音質向上が望めますが,価格がとても高いため,今回は採用を断念せざるを得ませんでした.そこで,試用も併せてチェコ製のJJのコンデンサを使ってみる事にしました.JJは球で有名なTeslaの血を引く会社で,Teslaを感じさせるような素晴らしい球も製造しています.もし駄目ならF&Tへの代替も視野に入れての採用となります.

トランス類は,実用本位のノグチを選択します.価格が安いため,コスト重視に思われる節もあるようですが,ノグチのトランスは決して音質面では劣っていません.装飾をしなかったり,各種データを省略する,直売,といった価格を下げるための工夫があるため,価格からは信じられない素晴らしいトランスです.シングル用としては,PMF-10Wがベストセラーですが,今作は出力が1W程度,NFBも無し,コストを押さえる,という理由からPMF-6Wを選択します.シングル用トランスは,大きさが命とも言えますが,価格差がほぼ倍という事も考えると,コストパフォーマンスは高そうです.

※現在は生産しておらずアムトランスAMRGが同等品。

このコンテンツは 2003年に別のサイトに掲載したものを加筆、修正して転載しています。