回路は,TU-870とは全く異なる構成のため,比較する意味はありませんが,TU-870では5極管部を5結とし,出力を稼いでいます.しかし,6BM8ですから,3Wも出ていないでしょう.どうせ出力を望めないのなら,音質的に好ましい3結とし,出力は1W程度とします.TV用のサブスピーカを鳴らす程度ならN響が十分に鳴ってくれます.またTU-870ではNFBを用いています.その一方,出力段のグリッド抵抗には並列にコンデンサが抱いてあり,これは可聴領域にかかる周波数から高域を落としてあります.この意味は分かりませんが,貧弱な出力トランスによって低域が出にくいこととバランスをとるためか,高域を意図的に落とす事で,真空管アンプのイメージに近い音を出そうとしているのかもしれません.この事から考えても,NFBはアンプ全体の特性を狙っているというより,出力トランスの特性をカバーする,或いはアンプ全体の調整,という意図で使われているのかもしれません.もちろん,終段が5極管なので,NFB無しで仕上げるのは,性能的にもダンピングファクタ(DF)的にも不可能とも言えます.
一方,私はNFBについてはメリット,デメリット両面があると思いますが,下手なNFB程無意味なものはないと考えています.回路をきちんと考え,分かっている人が設計した回路はNFBを用いることによるメリットもあります.しかし,私はたとえどんなにNFBのメリットがあろうとも,オーバーオールNFBアンプの出す,縦割り的な空気感が嫌いです.レンジが狭かろうと,DFが悪かろうと,オーバーオールNFBを掛けないアンプのリズム感ある音が好きです.
B電源ではチョークコイルを用いる私ですが,今回はスペースを使わない,コストを押さえる,という点から抵抗によるπ型リップルフィルタとします.これは6BM8に供給する電圧が低く,電圧降下させることが必要なので,それも兼ねての選択です.実際には,リップルは大して問題になりません.神経質に取りきろうとする人もいますが,音楽を聴いている間はリップルなんて聴こえませんし,無音部でも低レベルな100Hzや120Hzの音なんて気になりません.よっぽど外来ノイズやプレーヤの動作音,エアコンの音などの生活音の方が耳障りです.
このコンテンツは 2003年に別のサイトに掲載したものを加筆、修正して転載しています。