EL34PPアンプの製作

位相反転段

プッシュプルアンプでは,位相反転段が必要になります.その方式は多々あり,懐古の頃より,様々な議論が行われてきました.主な方式としては,P-K(プレート・カソード)分割型自己平衡型マラード型差動型クロスシャント型などがあります.それぞれにメリット,デメリットがあるので,回路に併せて最適なものを選択すればいいのですが,私なりの考察もあって,P-K分割型を選択しました.

まず,P-K分割型については,誤解が多いようなので,この点を間単に釈明したいと思います.P-K分割型は,一見するとプレート側がカソード設置,カソード側がカソードフォロアに見えるため,上下平衡性が失われる,という見解が多いのに驚きます.これは,回路の動作を理解せず,一つ覚えのように見た際の考え方です.球とはどのような素子で,どのような原理で信号を増幅しているのか,という事を理解すれば,P-K分割型は高域までずっとフラットに位相が回る事無く,周波数特性に優れる回路である事がわかります.また,P-K分割型のデメリットとして,ゲインが1未満である事が言われますが,その対比として出されるマラード型も一見ゲインがあるようですが,平衡性を問題ないレベルにしようとすると,共通抵抗を大きくせざるを得ず,結局ゲインは得られません.負荷を変える事によってバランスをとろうとしても,アンバランスである事には変わりありません.また球数も多くなります.メリット少なく,デメリットが多いと言えそうです.P-K分割型にカソードフォロアを加えた変形アルテック型と呼ばれる回路もありますが,これも前述誤解から生まれたと推測されます.もちろん,出力管を強力にドライブする,という目的であれば理解できますが,上下の負荷対応性の不平衡をなくす,という目的には必要ありません.なぜかというと,P-K分割型では上下に負荷のドライブ能力にほとんど差がないからです.もちろん,局部容量などの問題もあり,全く同じとは言えませんが,回路図上では問題ないでしょう.これは非常に単純な問題なのですが,キルヒホッフの法則の通り,途中で電流が生まれたり消えたりする事はないのです.きちんと電流の流れを考えましょう.

まぁ,最たる採用理由は,その音質です.P-K分割型を採用したアンプは非常に位相がよい音がし,不平衡性から生まれるような歪みは出しません.また,無調整で回路が出来上がるというのも私は重視する点です.

このコンテンツは 2003年に別のサイトに掲載したものを転載しています。